2008年9月26日金曜日

ABA meet with SEC for issues on Fair Value accounting

再びFair value accountingについてです。下記ニュースを見つけたので、少しコメントしてみます。
CFO.com
http://www.cfo.com/article.cfm/12287228/c_12304033?f=home_todayinfinance

これは、アメリカの銀行業協会がSECに対し、時価会計は本来の資産価値を反映せず、現在の市場環境において適用するのは適切ではない、とのコメントをしたようです。

大暴落マーケットにおいて、市場価格は本来資産がもつ資産価値を反映しておらず(たたき売り価格のようなもので)、現在資産を売ることを考えていれば正しい価値ですが、もし売ることを考えていないならば、適切な価値ではないとの理論です。もし今後も資産を保有し続ける限り、本来の資産価値を反映するように将来キャッシュフローに基づいた割引現在価値を使うなどして、本来の資産価値を反映させるべきとのコメントです。

この本来の資産価値を割引CFで出そうという理屈は、金融商品以外の資産であれば正しい考えであり、必ずしも間違ったことを言っているとは思いませんが、銀行が苦しくなったからその理由を会計に押し付けているようにも見えます。。。現在の会計においても満期保有目的債券の考え方や、売却可能有価証券(Available for sale)といった考え方に基づいて、金融商品の損益を売却時まで認識しなくてもよい方法はあります。ただ、銀行がトレーディングデスクで行っている金融取引は売買目的有価証券としてFair Value accountingを使う必要があり、多くの問題が露呈しているのは確かです。

今後こうした声にどのように応えていくのか、非常に興味深い問題だと思います。

2008年9月24日水曜日

世界に示す日本金融機関の存在感

野村HDによるリーマンブラザーズ欧州・中東部門の買収が決まったようです。リーマンの欧州部門については以前から英銀大手バークレイズが買収提案していた他、この数日間の間にスタンダートチャーターズも買収に乗り出していました。そこを押しのけての買収劇になりました。また日本ではすでに報道されている通り、MUFGによるMSへの超大型出資も決まり、いよいよ日本の金融機関の存在感が世界に出てきました。

長いトンネルを通過していた日本の金融機関。まだまだ買収劇は止まらないはずです。これからどんなドラマが待っているか楽しみですね。

2008年9月23日火曜日

投資銀行の行方そしてサブプライム問題とSOX法

投資銀行システムの消滅

アメリカ証券会社のシステムがとうとう崩壊してきました。21日に発表された、米連邦準備制度理事会(FRB)によって、米証券大手のモルガン・スタンレー(NYSE:MS)とゴールドマン・サックス・グループ(NYSE:GS)を従来型の銀行持ち株会社に変更するとの決定。これは投資銀行(証券会社)のシステムを消滅させるという事です。

投資銀行とはアメリカで発祥されたもので、日本でいえば証券会社になります。ヨーロッパなどではドイツ銀行やHSBCなど通常の銀行の形態をとりながら投資銀行部門をもつというのが一般的であり、純粋な投資銀行というのは存在しないと思います。日本においても、大手金融機関は商業銀行のビジネスモデルが基本となっています(MUFG、みずほ、三井住友・・・)。また証券会社のビジネスモデルもアメリカの投資銀行モデルに比べると、自己リスクを比較的取らない収益構造のため、このような大事件には発展しませんでした。余談ですが、日本では法規制の観点から銀行が証券業務を行えないため、”銀行”と”証券会社”は別会社にされています。

そして一連の大事件。ベアスターンズから始まり、リーマンブラザーズ、メリルリンチ、の問題。そしてとうとう米投資銀行トップ2のビジネスモデル変更。大きな転換期に来ているのは間違いありません。

サブプライム問題そしてSOX法

昨年から続くサブプライム問題とは、裏を返せば流動性問題(liquidity crisis)であり、資金調達力の違いが今までの倒産劇を産んできたと言えます。証券会社の形式をやめるということも、資金調達方法として短期資金に頼る方法をFRBが許さないという強い決定であり、今後より監督が強まっていく事が予想されます。

2001年に始まったEnron、WorldComといった会社の倒産によるSOX法の設立。2007年に始まったサブプライム問題によるFRBの監督強化。考えてみると、形は違えど、歴史は繰り返すものです。(あまりに短い間での出来事ですが。)

今回の問題が今後どう発展するかはまだ分かりませんが、少なくとも金融機関にとって大きな転換期に来ていることは間違いありません。まだまだサブプライム問題の夜明けは見えないですね。

2008年9月22日月曜日

脆弱なFinancial Markets

本日から仕事始めです。それにしても先週のMarketの動きはすごかったですね。一つ一つのニュースにマーケットが大きく動くこの状況は、正常な動きとはかけ離れています。

そもそも問題の根源は、いったい何が問題なのかがはっきり分かっていない点・・・つまり金融機関が抱えているリスクがどれほどなのか、いったい何が問題なのかの全容が把握されていない点だと思います。

昨年のサブプライム問題から始まり、Credit crisis、 liquidity crisis、そして様々な個別Credit issues(モノライン会社の信用性低下、格付けの信頼度低下により高格付け会社の問題露呈、ベア・スターンズ、AIG、Lehman・・・)。こうした数々の問題が起きている事は確かですが、それ以上に、複雑化した金融商品が含む本当のリスクがどれだけなのか、その全容が把握できていないのが問題です。

話題の中心である投資銀行においても、保有する金融商品のリスクの全容は把握出来ていません。それが証拠に、マーケットの動きに合わせるように”サブプライム損失の拡大”といったニュースが後を絶ちません。証券化商品の開発、レバレッジ商品の開発は高度に進んだ結果が、元の原資産のリスクを見えなくし、また誰も原資産のリスクを見なくなってしまったのだと思います。

一方、通常の貸付業務の比率が高い日本金融機関は、これまで常に原リスクである貸付者の信用リスクの判定といった、基本的事項を行ってきたことから、世界的な大被害から免れているのだと思います。手元資金の豊富な日系金融機関にとっては、今のマーケットは絶好の買収時期ですね。

2008年9月20日土曜日

Lehman brothers...Merrill lynch...AIG...

夏休みを取って1週間旅行に行ってきました。帰ってきてみれば・・・驚きの状況に。
リーマンの倒産、メリルの買収、AIGが政府管理下に。。。BigWeekにゆったりと休暇を取っておりましたm(__)m

金融不安、Economic downtownはまだまだ止まりそうにないですね。

そう言えば今BBCで、JK Rolling (ハリポタ作者)がイギリスのLabour party(労働党)に£1mの寄付をしたというニュースが流れています。。。

こちらは金融不安なんて関係ない世界ですね。

2008年9月1日月曜日

International Accounting Ahead

久々の更新です。色々とあり非常に忙しかったので中断していました。

久々のブログはIFRSです。SECです。詳細です↓。

http://www.sec.gov/news/press/2008/2008-184.htm

とうとうSECが重い腰を上げ、IFRSの適用を容認とも言える発言をしました。ヨーロッパをはじめ多くの国で適用、適用されることが決まっているIFRSですが、肝心のUSにおいてはその対応が未定となっていました。つまり世界が大きくIFRSとUSGAAPのDouble standardでいくのか、USもIFRSを適用するのか・・・、そしてその答えを示唆するものが今回のSECによるコメントです。

SECによれば2014年までにIFRSの利用を目指すとの事で、最終的にIFRSの適用をするか否かについては2011年までに決定するとの事です。これは事実上のOne standardの容認であり、US(SEC)もIFRSに統合されていくという事です。

これだけ言うと、全てIFRSで決まりか!とも聞こえますが、必ずしもそうとは言えないのが裏事情だと思います。SECは今までも会計理論よりも政治論(判断の余地の排除)を大事にしてきた背景があります。そのSECが単純にIFRSをハイ適用!と言う事は無いと思います。

つまり今回のコメントはSEC自体IASB(国際会計基準審議会)に影響力を持ってきた→IFRSの作成、改訂に影響力を持ってきた、と言う事を裏付けるものとも考えられます。なんといっても政治力がすごいですからね(→知ったかぶりのコメントで申し訳ありません)。

何にせよ、IFRSの動向から目が離せない時代になってきました。

2008年4月5日土曜日

公認会計士協会のインフォメーション 続き

今回の会計士協会のインフォメーションに関し、少し質問を受けた事から、続編を書く事にしました。

まず、これはあくまで「監査人に向けたインフォメーションであり、会計基準の変更でも、金融機関(また一般事業会社)に対する通達でも何でもありません。ぶっちゃけた話が、「会計士諸君! 金融資産の評価-時価の適切性について監査をする際には、現状の市場状況をよく判断、しっかり監査するように!!」と言っているだけですよね。


従って会計基準自体に何ら変更はありません。時価の定義も変えたわけではなく、例えば「気配値」についても言及されてますが、これも従来から何ら変わっていません。もとから時価とは「公正な評価額」の事であり、日本の会計基準からすれば、公正な評価額(→独立第三者の当事者が取引を行うと想定した場合の取引価額)は、以下の2つに分類されます。
①市場価格に基づく価額
②合理的に算定された価額

①の背景は、実際の取引価額(つまり現金の受取、支払価額)が時価であるという考えです。そのため、市場の流動性がない場合(取引したい当事者が非常に少ない状況)、ブローカーの提示価格が本当に「市場価格・実際に現金決済される取引価格」と言えるのか、という議論が出てくるのです。
この点について明確にしたのが今回のインフォメーションであり、現状のような流動性リスクが高い状況では、ブローカーの提示している時価が正しくない場合もある、と言っているんですね。

②については、実は今回のインフォメーションでは深く言及していません。この点については個人的に不十分であると考えている点です。

今回のインフォメーションにおいては、時価の定義として、公正な評価額とは取引価額(現金決済時)であるという事を再確認したかったのだと思います。特に非流動的な市場環境においては、ブローカーの提示する時価と、実際の取引価額が乖離する事が容易に起こりうるため、その事も踏まえたうえで適切に評価を行っている事を監査人として確認するよう警鐘を鳴らしているのです。

(以下、細かい議論。。。)
なお、組込みデリバティブの会計処理に対するコメントですが、これは少し誤解を生むもののような気がします。日本の会計基準の場合、組込デリバティブのリスクが当初元本に影響を与えるか否かがポイントになっているため(US GAAPの影響)、従来は組込デリバティブのリスクが当初元本に影響を与えていないと考えていたとしても、時価が相当程度下落している場合、影響を与えかねない・・・との事。

個人的には、これは会計基準そのものに若干問題点があると思います。本来組込デリバティブはその性質によって会計処理を区分すべきだと思うのですが(概念的にはUSGAAPもIFRSも組込デリバティブが本契約に密接に関連しているか否かで判断する点で一致しています。:当初判断基準)、日本の場合は何故か(???)、USGAAPにおける密接な関連性に対する判定基準をそのまま当初判断基準としてしまっているため、概念論が抜けているんですよね。そのため、組込デリバティブの再判定が必要な例も出てきてしまう。。。(ちなみに国際会計基準でも、一部の例外的事象が生じた場合に再判定する事は許されているんで、特別日本基準がおかしいとも思いませんが。)

ずらずらと書いてしまいましたが、結局会社も、会計士協会も、まだまだ手探り状態で進んでいるのは間違いなく、今後実務がしっかり決まってくるのだと思います。そのような大事な局面において、監査人の役割を適切に果たす、この責任感、そして危機感というものを共通認識として持つ。この事が一番の今回の公表インフォメーションのメッセージなのだと思います。

2008年4月2日水曜日

日本公認会計士協会 「証券化商品の評価等に対する監査に当たって」

公認会計士協会がサブプライム対応という事で、表題の監査留意事項というのを公表しました。正直内容としては、かなり曖昧な内容であり、実務上有益なものと言うよりも、業界としても注意を喚起してますよ!とのアナウンス効果のみを期待したものであるように思います。詳細としては・・・

①サブプライム関連商品、証券化商品について正確な評価が行われる必要がある+監査人としても十分に監査上注意する必要がある
→ごもっともですが・・・・・、ま、前置きという事で。

②証券化商品の評価については、流動性リスクを十分に考慮する必要があること、企業がブローカーから時価を入手している際は、1社だけではなく各社から情報を入手する必要がある。
また、区分処理を行っている組込みデリバティブについては再検討の必要性を十分に留意。
→悲しいですが、以上。

③証券化商品の開示の適切性については、監査人が適切な開示が行われているかを確認する必要がある。
→以上???

という事で、あまりにさっぱりした公表情報にさすがに驚きと悲しみを隠しきれませんでした。出来ることならば、公認会計士協会という立場から考えれば、より深く「時価」についての再定義、具体的な指標の提示が出来ればよかったのかなと思います。また、開示についても、証券化商品から生じるリスクの認識、そのリスク開示の必要性という点まで踏み入ってほしかったというのが本音ですね。

2008年3月30日日曜日

三井住友FG NY上場

三井住友FGが2010年を目標にNY証券取引所への上場を目指すとの発表がありました。なぜ今この時期にこういった決断があったのでしょうか?全く実情は知らないため、非常に興味があります。通常USや海外の取引所へ上場するメリットとは・・・

メリット:国際的知名度Up 資金調達の容易化 
デメリット:上場基準の要求に応えるための事務量、経費の増大

確かに、国際的に知名度・信用力を上げるためにもUS上場というのは意味があるかもしれません。しかし、今後IFRSが主流になりうると見込まれる中、またUS SOX等の膨大な事務量が要求されるUS上場、さらにUSのRecession(景気後退)が強く見込まれている中において上場を目指すのです。これには、コストに見合った見返りがあるのか?という疑問がどうしても残ります。

果たして、NY上場という決断が株主価値向上、企業価値向上といった根本的な目的に合致しているものなのか・・・。また何故このタイミングなのか・・・。他のメガバンクに追随するため・・・といった目的でない事だけは願っています。

2008年3月29日土曜日

Fair Value Accountingの議論

2008年第一四半期終了に向け、Fair Value Accountingの会計及び財務情報の開示方法(Disclosure)に関して議論が活発化しています。現在の議論の中心は何かと言うと・・以下の2点です。

1) Fair Valueとは何か?

特に市場取引がなく、金融資産の評価を行うのに見積もり要素が入ってしまう場合が問題の中心です。サブプライム関連で大きく損失を出している多くも、このように元々金融資産の評価自体が難しく、多分に見積もりの要素が介入していた事が問題の一因であるためです。

2) Fair Value Accountingにおいてどのような開示を行うのが適切か?

USのSECも近々開示方法のガイダンスを出すようです。内容としては、“会社として見積もりの要素を使用している場合、より説明をするように!”という感じのようです。つまり情報開示の充実ですね。

Fair Valueの評価方法自体に判断の余地があるため、1の議論だけではなく、情報開示の充実を図ることで、どのような判断を用いたか、なぜその判断が正しいのか、また判断の間違えに対するリスク評価はどのようになっているのか・・・、といった補足的情報が必要となるのです。

何はともあれ、複雑な世の中ですよね。という訳で、個々の内容についてはまた別の機会にします(^_^;)

2008年3月27日木曜日

LIBOR上昇?

3ヶ月LIBORの金利が上昇(資金調達コストの上昇)しています。詳しくは↓
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-30995920080326

金利はお金を借りる時のコストですが、まず政策金利が決められ、その金利に基づきインターバンク間の短期金利(金融機関同士の貸出金利)が決まり、銀行が顧客の信用リスクに基づいて貸出金利を決める、というサイクルだと思います。そのため、通常インターバンク間金利であるLIBORは政策金利と同様の推移を見せるはずです。

・・・しかし、ニュースにあるとおり、政策金利に対するスプレッド(上乗せ金利)が拡大しています。この動きは実は昨夏のサブプライム問題発覚時と同じ動きです。

何が起きているかといえば、
1. 景気後退懸念から、政策金利を下げ、また中央銀行から市中への資金供給により、豊富な資金を市場に用意し、貸し渋りを防止(の予定(^_^;))
2. 銀行は豊富な資金供給から、貸出を行えるはず・・・・が、信用不安があるため、やはり貸したくない。そのため、貸出金利にスプレッドが乗ってしまう。
3. インターバンク間の金利上昇
4. つまり信用不安が未だに残っているため、政策金利は下がっているのに、短期金利は上昇。

サブプライム問題は様々な問題を露呈していますが、その重大な一側面として、市場の流動性リスクがあげられます。分かりやすい言い方をすれば貸し渋りですよね。信用リスクに不安があるから、貸したくない。貸すなら金利は高くすると。
サブプライム問題後、様々な取り組みが行われていますが、LIBORのこういった動きを見ていると、まだまだ市場は通常の状態には戻っていないと感じさせられます。それにしても、金利に為替に株価に本当にすごい変動ですよね。

2008年3月25日火曜日

IFRS(国際会計基準)-日本

本日Financial Times(FT)の記事で会計関連の特集がありました。その中でIFRSが世界的に唯一の会計基準となるのか?という記事がありました。その中で「IFRSは世界的に既に100カ国以上の国に適用、また採用される事が決まっており、それには日本、カナダ、中国等が含まれる。」。えーっっ?日本がIFRS採用。まだ決まっていないですよね。まさかの記事に驚きと、ため息が止まりませんでした。

基本的に日本の会計は日本の会計基準に基づいて行われていますし、今後の方針もまだ決定されていないと思います。アメリカが近頃IFRSに接近している中、日本も独自の会計基準に固執し続ける事は難しいかもしれません。また世界的に決して発言力が強くない日本の立場において、これだけIFRSが世界共通言語になってくれば、今後決して無視できない存在となると思います。

では、今後どうなるのでしょう?
もしかしたら将来的に基本的な連結財務諸表の開示はIFRSで行う、もしくはIFRSが許容する日本基準において行う。そして、税務計算及び伝統的な日本の配当可能利益の計算といった目的から、個別財務諸表の開示は日本基準で行う。といった方向性になるのかもしれませんね。いずれにしても、日本がもっと発言力を持って、世界に主張していかなければいけないですね。FTにも主張しなければ。。。

2008年3月22日土曜日

日銀総裁空白

福田首相のメルマガ(日銀総裁に関する噂のボヤキ記事)を見てみました。↓
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2008/0320/0320.html

最近国会ではこんな議論をしていますが、早く適任者を決めてほしいものです。
Noとしか言えない民主党にはやはり、海外メディアも疑問?の記事を書いているのが目に付きます。

でもそれより言いたい事は、日銀総裁が空白だと言う事態について、あまり世界的には問題視されていない点です。それより問題視されているのは、自民党と民主党が痴話げんかをしていて、日銀総裁が決まらないと言う点、つまり福田首相もメルマガで書いている通り、政治の決断力です。

USのRecession(景気後退)が現実視されており、これから日本が世界的に大きな役割を果たすべき(果たして欲しい)って時に、何の話し合いを国会でしているんだ?と思いますよね。どちらが悪いとか何とか、前に進まない議論は後にして、しっかりきっちり、適任者を決断して欲しいものです。

2008年3月21日金曜日

仏銀行不正事件-SOCIETE GENERALE (内部統制)

この事件は内部統制の網を巧妙にくぐり抜けた事件であり、私が一番問題だと考えているのは、ITシステムに不正アクセス可能だった点、そして取引のキャンセルを自ら行え、そのチェックが有効に機能していなかった点です。

もちろん他の点も問題なのですが、実際問題として、取引確認(Confirmation)がすぐに行われない事はあり得る話ですし、それ自体が行われなくても、怪しまれずに取引は成立してしまいます。文書の不正にしても、やはり精巧に偽装されれば、発見できなかったとしても、仕方ない気もしてきます。

不正の発覚は取引相手の異常性に気付いた会社が調査を実施した事でした。これに関しては、やはり前回書いたように、もっと早くConfirmationの代替的手続きを行う事により事件の早期発見が出来たはずだと思います。

また、Newsでは触れられていませんが、一般的な話として、バックオフィスによるトレーダーのポジション管理が、損益の動き(P&L)、またVaRといったマーケットリスクの動きだけで管理している点も実は問題だと考えています。なぜなら、それらはシステムによって入力された取引が実在する事を前提に作り出された数値であり、決して実際の取引自体を管理している訳ではないからです。

もちろん膨大な量の取引を1件ずつ管理する事は投資銀行において現実的ではありません。ただ、現状の管理方法、内部統制には限界があると言う事も、認識し、常に不正を防止するべくアンテナを張っておく必要があるのだと思います。

仏銀行不正事件-SOCIETE GENERALE (不正方法)

前回の続き:不正の方法について

トレーダーは過去5年ほどミドルオフィス(フロントオフィスであるトレーダーの業務を管理する役割)で働いたため、会社のシステム、また金融商品の取引の仕組みなどに精通していた。そして不正の全容は前回説明したとおり、虚偽の売りポジションを作り出した事。つまり実際の買いポジションを隠すための虚偽取引。そのため当然お金の支払・受取も発生していない。

(不正の方法)
①まず不正の取引として選んだのが、比較的会社の内部統制がきかないと思われる取引。つまり即座にお金の支払・受取がなく、かつマージンコール(デリバティブ取引を行ううえでの保証金のやり取り:再び野村證券HP:http://www.nomura.co.jp/terms/english/m/oisho.html)が発生しない取引。そして、取引の相手先に対して即座に取引確認(Confirmation)を行わなくてもよい取引です。

おそらく、市場で売買されている取引ではなく、当事者間で行う先渡取引を行ったのではないかと思います(→推測です。)つまり先物取引(市場取引)の買いに対し、虚偽の先渡取引(当事者間売買)の売りポジションを保有したと見せかけたのだと思います。

→会社の重要な内部統制としてのConfirmationをくぐり抜ける手口

②不正に会社のシステムにアクセスし、本来トレーダーが出来ないはずの、取引のキャンセルを自己で行う。つまり売りポジションの実際のお金が動くはずの日を前にして、取引自体をキャンセル。そして新たに複数の虚偽の取引を開始

→これは会社の内部統制としてのITアクセスにおける重大な不備でしょう。部門間における牽制機能が働いていなかったと言う事です。またキャンセル後に多額の取引を行っていた事に対し、ミドルオフィスによる牽制機能(取引を怪しいと気付かなかった)が有効に機能していなかった事が推測されます。

③虚偽の取引文書を不正に作成

→これを発見できなかったのは、会社の不備であると思います。取引文書に当然取引の相手先も書いてあるはずであり、即座にConfirmationを送る必要がないとしても、FAXで確認するなり、取引の実在性を確認する内部統制が必要であったと思います。

以上の不正手段により、くぐり抜けられた会社の統制機能。お金の横領といった直接の不正でなかったために、発見が遅れてしまい、結果的に蒙った大損害。これらの事実から学ぶべき点は多いですよね。

仏銀行不正事件-SOCIETE GENERALE

2008年第一四半期の株式市場を語る上でかかせないニュースとしては、フランス大手銀行のソシエテジェネラルの不正事件です。詳細はこちら↓
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/banking_and_finance/article3263618.ece

この不正発覚とともに、保有していた株式の大量売却に伴う世界的なマーケットの混乱そして暴落。何よりこのような不正が今まで発覚しなかった問題点を考えたいと思います。

(不正詳細)
ソシエテジェネラルは株式トレードにおいて、直接リスクをを取って自己取引はしないポリシーとの事で、不正当事者のいた部署もArbitrage取引を行う部署であった(マーケットリスクを限りなくフラットにして、鞘抜きをするポジション:野村證券のHPhttp://www.nomura.co.jp/terms/japan/sa/saitei.html)。そして鞘取りの利益獲得のため、各ポジションは多額であった。(買いも売りも同レベルに多額)

しかしながら、当トレーダーは多額の買いポジション(先物取引)を保有し、マーケット上昇を当初信じていたためか、同額の売りポジションを持たず、不正取引によって虚偽の売りポジションを作り出した。これによって、実際のトレーダーのポジションは多額の買いポジション(多額のマーケットリスク)であったのに対し、会社の中では虚偽の売りポジションが認識されていたため、非常に小額のマーケットリスクしか保有していないと考えられていた。

不正発覚後その保有ポジションを売却したが、大量売却であったため、価格下落、そして最終的な損失約50億ユーロ(約8000億円)というとんでもない事態になりました。

2008年3月20日木曜日

円高 円高 円高

円高も円高、すごい状況が続いています。久々に見る1ドル100円をきる円高水準。かなりの為替の変動に驚かされるばかりです。為替の動きは通常、その国の強さ(経済力)また、金利水準によって、強い通貨が買われ、その通貨高になります。金利と為替の動きは金利が高ければ、その通貨を持っていることが得なので、通貨高につながります。そうすると今までの流れは・・・

今まで(理屈上): 円はあまり買われない→円安
少子化などを考えると日本の将来に少し不安→円を買うのは不安
ゼロ金利政策から量的緩和政策の時代→低金利の円は持っていても金利つかず。。。

今まで(実際): 国際的には資金調達としての円の役割→円売り→円安
キャリートレードのブログで説明したとおり、低金利かつ、市場に流通する大量の通貨として資金調達に最適な通貨として円が使われていた。

現在: ドル回避かつリスク回避から円の買戻しの動き
USのRecession(景気後退)を目の当たりにし、急激な勢いでUS資産、USドルから手を引く動きがマーケットの中で起き、その影響から円が買われ円高になっています。
また、リスク回避の動きからキャリートレードを終了し、円資金の返済、つまり円買い&円の返済という動きから急激な円高が起きています。

昨年までの1ドル120円とかの時から比べ、現在の日本の状況はファンダメンタルにおいて何も変わっていないはずなのに、これだけの影響を受けてしまうんですよね。何度も言いますが、金融面においては、ほんとに外部的影響に翻弄されている今日この頃ですね。

2008年3月16日日曜日

Fair Value Accountingに対する疑念の声

AIGが14日現在のFair Value accounting(金融資産などを公正なる時価にて認識する会計)を変更すべきだと言う要請をしているという記事がありました。
http://us.ft.com/ftgateway/superpage.ft?news_id=fto031320081815543732

AIGと言えば、USの保険会社ですが、サブプライム問題で大きな評価損を出したり、ここ最近あまり良くない記事が出てくることが多いのですが、それらの原因ともなっている会計のあり方自体に疑問をOfficialに問いかけています。

①AIG自体の問題:サブプライム資産を保有→含み損を十分に認識していなかった→そのため多額の評価損を期末に認識→紙面を騒がす→会計がおかしいと指摘

②保険会社のビジネスモデル:保険会社は、保険料の受取りに対し、資産の運用で利鞘を稼ぐビジネスモデル(利差益)のため、運用収益の悪化は財務諸表に多大な影響を与え、投資家に対する影響も大きいのです(運用自体が一つのビジネスの核なので)。

そこで、AIGは「別に今資産を売るつもりはないのに、現在売ったらいくらになるかで評価し、その結果多大な損失を計上しなければいけないのはおかしい」と言っているのです。

③会計の問題:現在の会計は貸借対照表を出来るだけFair Value(公正価値)で認識しようとする会計です(特に金融資産)。そのため、実際に資産売却をしていなくても含み損が出ればそれを認識する。結果、比較的損益にブレが生じます。ただこの変動はマーケットに連動しているものであり、まさに現在の会社の財務状況を表したものです。もちろんAIGの言う通り、売らなければ損失は実現しない訳で、将来評価が上がれば、現在の含み損は最終的に無かった事になります。それなのに、評価損を計上する事により、投資家の危機感をあおり、結果会社に悪影響を与えるというのはおかしい。と言うのも一理あるとは思います。

では問題の根源は何かと言うと、現在の会計及び財務諸表が理解しずらい、と言う点にある気がします。もし、投資家が正しく理解出来る財務諸表ならば、AIGの言う通り、将来資産を売るタイミングでは問題ないと考える投資家は、現在の状況を静観出来るでしょうし、現在の状況を重く見る投資家は危機感を持つと思います。

結局会計は会社の状況を表す鏡だと考えれば、その鏡に映った自分を見てどう行動するかはその個人によるのですが、その鏡が見やすいか見にくいか、この点は会計のあり方自体に戻るのでしょうね。

一会計士として、ちょっと真面目に考えてみたくなった記事でした。

2008年3月15日土曜日

Carry trade (キャリートレード)

イギリスの新聞を読んでいて最近新聞に出てくる日本の話は為替、そしてCarry Trade。
Carry Trade:金利の低い通貨で資金調達して、金利の高い通貨で運用して利ザヤを稼ぐ手法(Wikipedia参照です!)。 FX取引で言えば、円売り・他通貨買い(別にFX取引はしていませんが。)。

と言うわけで本題。サブプライム問題を発端に世界的に株式市場も暴落している中、投資家による株などのRisky資産から安全資産への資産シフトが起きています。その結果キャリー取引をしていた投資家、ヘッジファンドによる円の買い戻しが起きているんですよね。

簡単に言えば、保有していた金融資産を売り(リスク資産の切り離し)、借りていた円資金を返済しているって事です(→そして安全資産の購入)。その結果、、、円買い需要(円を返済するための資金)の上昇、円の価値の上昇、円高ですよね。

こう考えてみると、日本の為替の動きはやはり日本の経済力にリンクして変動しているというより、世界的な金融活動の動きに翻弄されているとしか思えません。 ゼロ金利及び量的金融緩和政策のもと、超低金利かつ流動的通貨としての円を資金調達目的でへッジファンドが円売りしていたことによる円安の流れ、そして円返済に伴う円高の流れ。。。もちろん為替の動きは様々な要因に伴っている事は確かですが、キャリートレードが市場に大きな影響を与えていたのも確かなんでしょうね。←市場関係者でも何でもないので、よく知らないですけど(^_^;)

2008年3月12日水曜日

サブプライム、英語では?

サブプライムってなぜサブプライムなのでしょうか?もちろんサブプライム問題と言えば昨年夏頃から世界的に問題視されているアメリカのホームローンを発端とする金融混乱/問題の事です。でもなんでサブプライムって言うんでしょうか???気になったので、まずは英語から調べてみました。

Subprime(Sub-prime) loan
これって、SubとPrimeの合成英語なんですね。Subは“補欠”とか“下位の”と言う意味。Primeは“最上の”とか“根本的な”と言う意味。二つ合わせて、「信用力の低い顧客に対する(融資)」。うーん、何となく納得。

と言う事で次回に続く。。。